見積ノート

電材卸の見積は、なぜ新人に3年かかるのか

新人が見積をできるようになるまで3年くらい、という中小企業庁の聞き取りの数字を大きく示した表紙
この記事の要点
  • 中小企業庁の2022年の報告書に、電材卸の新人は見積ができるまで「3年くらいかかる」という声があります。
  • 時間がかかるのは書式より、品番・掛率・特値・建値を1行ごとに決める判断です。
  • その判断の理由を、直した行ごとに残すと、新人が確かめながら覚えられます。

新人がつまずくのは、見積のどこですか

つまずくのは、拾い出し表の1行を品番と単価に直す所で、書式より1行ごとの判断に時間がかかります。

見積の1行が決まるまでの5つの段。拾い出し表の品名を読む、品番に直す、メーカーに照会する、単価を決める、承認して出す。各段で決まることを添えています。

中小企業庁の報告書と電材卸の求人票から、見積の流れをまとめると次のとおりです。

最初の山は品番です。卸の自社品番と、メーカー品番が違うことがあります。同じ商品でも、受注の品番と発注の品番が違うことがあります。ビス1本のように、型番の無い部材もあります。ケースで仕入れてバラで売るので、単位も変わります。報告書は、これらをヒューマンエラーの原因に挙げています。聞き取りでは、受注で受けた品番を、発注の品番に手で直して登録している卸もありました。

量も多くあります。報告書によれば、電材卸の受注の6〜7割は電話とFAXです。従業員400人規模の卸では、受注は月に約2万件で、そのうち約1.2万件が電話・FAXでした。紙で届いた1行ずつを、人が品番に直しています。

なぜ、書いて渡すだけでは覚えられないのですか

単価の決め方が得意先・物件・時期で変わり、同じ品番でも、出す値が1つに決まらないからです。

値段の基本は、定価に掛率を掛ける形です。公共工事では、掛率表が公開されています。山口県の例では、配線器具60%、既製の分電盤60%、LED一体型照明40%、防災設備35%です。民間の掛率は、得意先別・商品群別に決まります。その表は、ベテランの頭とExcelに分かれて置かれています。

商品の種類によっても、見積の仕方が変わります。報告書は電材を3つに分けています。

さらに、見積と請求の金額は後からずれます。報告書が挙げる理由は3つです。仕入量によるメーカー単価の変更、見積のあとの数量の変更、原材料価格の変動です。工期が2〜3年の現場では、見積の時と注文の時で相場が動きます。電線なら、銅建値の動きも見ます。

こうした判断は、表にしても例外が残ります。どの例外をどう扱ったかは、隣で見て覚えるしかありませんでした。それが「3年」の中身だと考えられます(推測)。

ベテランの頭の中にあるものは、会社に残せますか

残せますが、全部を書き出す必要は無く、直した行に一言の理由を添える所から始められます。

報告書は、業界の課題の1行目に「作業に熟知した人材が見積・受注を行う」と書いています。続けて「属人的で、人手不足が想定される将来に対応できなくなる」とあります。同じ報告書の聞き取りには、「見積に手間がかかっており、AI等で解決できれば良い。ただし現場の抵抗は大きい」という声もあります。

抵抗が出るのは、ベテランの仕事が増えるときです(推測)。そこで、新しい入力は増やさずに、ふだんの直しに一言を足してもらいます。たとえば、次のような一言です。

一言がたまると、新人はそれを読みながら下書きを作れます。ベテランは、新人の下書きを確かめる側に回ります。決めるのは、これまでどおりベテランです。

株式会社TechWorkerは、電材卸向けに「デンミツAI」を用意しています。AIが見積の下書きを作り、決めるのは人、という形です。御社の見積1件で、30分の実演(無料)をお見せします。

今週できること

1直近の見積1件で、理由を聞く

ベテランに「この行はなぜこの品番・この掛率か」を聞き、余白に書き留めます。

2直した行に、一言を添えてもらう

新人の見積をベテランが直すとき、直した行に一言の理由を書いてもらいます。

3掛率の置き場所を一覧にする

得意先ごとの掛率が、Excel・販売管理・頭の中のどこにあるかを書き出します。

よくある質問

「3年」という数字は、どこから来ていますか。

中小企業庁が2022年にまとめた報告書の、電材卸への聞き取りに出てくる声です。業界全体を測った平均ではありません。

見積書の書式をそろえれば、早く覚えられますか。

書式は助けになります。ただ、時間がかかるのは1行ごとの品番と単価の判断です。直した理由を残す方が、覚える近道になります。

ベテランに、理由を書く時間がありません。

全部を書く必要はありません。直した行にだけ、一言の理由を添える形から始められます。

出典