ベテランが休んでも見積が止まらない会社の作り方

- 新人が見積をできるまで「3年くらいかかる」という声があり、2人目はすぐには育ちません。
- 近道は、ベテランの決め方を直した行ごとに残し、下書きを別の人が確かめる手順を決めることです。
- 1つの営業所の見積から試し、固まった形を隣の営業所へ広げます。
見積が1人に寄ると、何が起きますか
その人が休むと工事店への返答が止まり、品番や掛率の決め方が、その人の頭の中にしか無いことが表に出ます。
中小企業庁の2022年の報告書は、電材卸の課題の1行目に「作業に熟知した人材が見積・受注を行う」と書いています。続けて「属人的で、人手不足が想定される将来に対応できなくなる」とあります。聞き取りには、新人は見積ができるまで「3年くらいかかる」という声もあります。
見積の仕事は、営業事務にも広がっています。ある電材卸の営業事務の求人には、次の一文があります。
「営業が帰社したら、御見積などの資料作成やメーカーへの問い合わせ等、営業の事務処理をサポートします。」
見積の手前の照会や資料づくりも、限られた人で回しています。
人手にも、余裕は大きくありません。全日電材連の会長は、「現場技術者の慢性的な人手不足の拡大」を挙げています。工事側でも、日本電設工業協会の会員の技能職員は、2024年度に前年より4.8%減りました。
ベテランの決め方は、どう残せばよいですか
全部を書かせず、直した行に一言の理由を残してもらい、品番の読み替え、掛率、特値の3つから始めます。

報告書の聞き取りには、「現場の抵抗は大きい」という声もあります。ベテランに長い手順書を頼むと、仕事が増えます(推測)。そこで、ふだんの直しの横に、一言を足してもらう形にします。
メモの中身は、次の3つに絞ります。
- 品番:この品名は、このメーカー品番に読み替える
- 掛率:この得意先の、この商品群は何掛けで出す
- 特値:この物件は、メーカーの特値で出す。期限はいつまで
ベテランの役目は、手本を作り、下書きを確かめる側に移ります。決めるのは、これまでどおりベテランです。メモがたまると、新人はそれを読みながら下書きを作れます。
下書きを確かめる手順は、どう決めればよいですか
誰が確かめるかと、ベテランに回す行の条件を先に決め、ベテランが見るのは印の付いた行だけにします。

手順の例は次のとおりです。
- 担当者が拾い出し表を受け取る
- 下書きを作り、品番と単価の候補、根拠を付ける
- 特値切れ、いつもと違う掛率、古い単価の行に印を付ける
- 印の無い行は、担当者が確かめて承認する
- 印の付いた行は、ベテランが決め、理由を一言残す
- 担当者が見積を送る
ベテランが休んだ日は、印の付いた行を上長が見ます。メモに同じ例があれば、それに沿って決めます。
決めた手順は、紙1枚にして見積の席に置きます。誰が確かめ、どの行をベテランに回すかが、新しく入った人にも分かります。
どこから試せばよいですか
1つの営業所の見積をする人から試し、固まった決め方のメモを、隣の営業所へ広げます。
首都圏の電材卸を公式サイトで数えると、従業員50〜300人の会社は5〜18拠点が典型でした。拠点が多い会社で全営業所を一度に変えると、現場の負担も一度に出ます(推測)。
まず、自社の見積が営業所ごとに作られているか、本社でまとめているかを確かめます。営業所ごとなら、1つの営業所から試します。本社でまとめているなら、見積担当の1人から試します。
試す間は、印の付いた行の数と、ベテランに回した行の数を数えます。この数が減っていけば、メモが効いている目安になります(推測)。数える期間は、月の締めに合わせると比べやすくなります。形が固まったら、隣の営業所に同じ手順とメモを渡します。
株式会社TechWorkerは、電材卸向けに「デンミツAI」を用意しています。AIが見積の下書きを作り、決めるのは人、という形です。御社の見積1件で、30分の実演(無料)をお見せします。
今週できること
1休んだ日の代わりを決める
見積ができる人の名前を書き出し、その人が1週間休んだら誰が出すかを決めます。
2直した行に一言をもらう
ベテランに、次の見積で直した行に、一言の理由を書いてもらいます。
3試す営業所を1つ決める
試す営業所を1つ決め、そこで月に何件の見積を出しているかを数えます。
よくある質問
ベテランが、仕事を取られると嫌がりませんか。
決めるのは、これまでどおりベテランです。直した理由が次の手本になる、と最初に伝えます。
メモは、どこに残せばよいですか。
見積書の控えや、Excelの横の列で始められます。行ごとに理由が残れば、置き場所は問いません。
本社で見積をまとめている会社でも、同じ進め方ですか。
同じです。営業所の代わりに、見積の担当を1人選んで試します。
出典
- 中小企業庁「中小企業の受発注デジタル化に関する調査報告書」(2022年3月)
- 明電産業 営業事務の求人(取得 2026年10月)
- Panasonic 業界トレンド情報 74号 全日電材連 会長インタビュー(2025年11月)
- 日本電設工業協会 会員の実態(2024年度)
- 全日電材連 首都圏5組合の会員名簿(本社119社)を、各社の公式サイトで確かめた集計(TechWorker、2026年10月)