電子受発注が20年進まなかった理由と、工事店側を変えない選び方

- 電材卸の受注は、いまも6〜7割が電話とFAXです。
- 電子受発注に対応しない理由の1位は、取引先との事情(価格交渉や信頼関係など)で、約4割でした。
- 工事店の頼み方を変えずに社内の下書きだけを変える方法なら、取引先の事情に触れずに始められます。
電材の電子受発注は、どこまで進んでいますか
仕入先への発注は進み、工事店からの受注は遅れていて、電子受発注への対応は発注側79%、受注側42%でした。
中小企業庁の2022年の調査(電材卸132社が回答)の数字です。卸からメーカーへの発注は、電子化が進みました。一方、工事店からの受注は、6〜7割が電話とFAXのままです。
量も多くあります。従業員400人規模の卸では、受注が月に約2万件で、そのうち約1.2万件が電話・FAXでした。因幡電機産業の電材カンパニーでは、営業1人に1日100枚弱のFAXが届くという事例もあります。聞き取りに応じた卸の1社は、1万弱の電気工事会社から注文を受けていました。相手が1万社あれば、全社に新しい頼み方をお願いするのは簡単ではありません(推測)。
業界団体も取り組んできました。全日電材連の会長は、「EDIについては20年以上前から取り組んでいたものの、業界としてあまり進んでいませんでした。」と語っています。2025年には、東北の4社で試験導入が始まりました。
なぜ、工事店とのやりとりは変わらなかったのですか
対応しない理由の1位は価格交渉や信頼関係といった取引先との事情で、工事店の流儀に合わせることが卸の価値だからです。
中小企業庁の報告書は、工事店の頼み方に応える柔軟さを、卸の価値に挙げています。現場を見てから電話で注文する、「この前のあれ」で通じる、といったやりとりです。
報告書には、ほかの理由も出てきます。操作の違うEDIがいくつもあり、普及すると今より手間が増える、という声です。デジタル化しない卸のほうが、工事店に選ばれる可能性にも触れています。
聞き取りでも、仕入先とのやりとりはデジタル化できそうでも、お客さんとのやりとりは難しい、という声が出ています。工事店に新しい入力をお願いすると、価格交渉や信頼関係に触れることになります(推測)。
工事店側を変えずに、何を変えられますか
変えられるのは卸の社内で、届いた拾い出し表を品番に直し、単価の候補を付ける所を下書きに任せます。

工事店からは、これまでどおり電話・FAX・メールで届きます。そこから先の、卸の中の手順を変えます。
- 届いた拾い出し表を読み、品番に直す
- 過去の見積と価格表から、単価の候補と根拠を付ける
- 担当者が印の付いた行を確かめ、承認して出す
見積書の形も、送り方も変えません。工事店から見える所は、そのままです。
道具を選ぶときは、次の点を確かめます。
- 工事店からの入口(電話・FAX・メール)は変わらないか
- 見積書の形は、今のままで出せるか
- 取引先に送るのは、人か
- 今の販売管理に書き込むか、横で使うか
始めるときも、一度に広げません。報告書の聞き取りには、「現場の抵抗は大きい」という声があります。1つの営業所の見積担当から試し、形が固まってから広げます。
社内だけを変えるとき、誰が何を決めますか
出す値を決めるのはこれまでどおり担当者とベテランで、下書きが受け持つのは候補と根拠を示す所までです。
下書きは、品番と単価の候補に、根拠と印を付けて担当者に渡します。担当者は、印の付いた行を確かめます。迷う行は、ベテランが決めます。
ベテランが直した行には、一言の理由を残します。たとえば「この得意先の盤類は物件の特値で出す」といった一言です。理由がたまると、次の下書きの手本になります。
取引先に見積を送るのは、承認した担当者です。下書きが、そのまま工事店に届くことはありません。工事店から見れば、いつもの担当者から、いつもの形で見積が届きます。
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今週できること
1見積依頼の入口を数える
先週受けた見積依頼を、電話・FAX・メール・来店に分けて数えます。
2工事店の困りごとを聞く
主な工事店について、今の頼み方で困っている点がないかを、営業に聞いてもらいます。
3手で直している所に印を付ける
拾い出し表が届いてから見積を出すまでの手順を書き出し、手で直している所に印を付けます。
よくある質問
EDIに対応しないと、取り残されませんか。
業界でも、2025年に東北の4社で試験導入が始まった段階です。社内の見積の下書きは、EDIの動きと別に進められます。
工事店に、何かお願いすることはありますか。
社内の下書きだけを変える形なら、お願いすることはありません。頼み方も見積書の形も、そのままです。
FAXが減っても、この考え方は使えますか。
使えます。届く形がメールでも紙でも、拾い出し表を品番に直す所は同じです。